晴れたら空に豆まいて

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晴れ豆秘宝庫

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2018/12/13(木)

Bridget St. John(ブリジット・セント・ジョン) “Hello Again” Japan Tour 2018
音楽ライター峯大貴によるイベント解説&ミニインタビュー

過去と現在を悠然と混じり合わせて、未来を見据える。フォーク・ミュージックはそんな歌の魂がローリング・ストーンし...

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過去と現在を悠然と混じり合わせて、未来を見据える。フォーク・ミュージックはそんな歌の魂がローリング・ストーンしていくことで今日まで更新されてきた。特に00年代以降はデヴェンドラ・バンハートやフリート・フォクシーズ、サム・アミドン、カート・ヴァイルなどが続々台頭し、60~70年代のフォーク・シンガーたちのソングライティングを参照点としながら時代をぐいぐい革新していく。そのアプローチはもはやムーヴメントを超え、2018年現在ある種、普遍的な教典になっているとも言えるだろう。その中でもフリー・フォーク全盛期にデヴェンドラ・バンハートがリンダ・パーハクスやヴァシュティ・バニヤンといった長らく表舞台から退いていたフィメイル・シンガーを再度引き上げたことは象徴的事象の一つである。そこからも10年以上経った現在、日本のライヴハウス・シーンにおいても京都のバンドHomecomingsが登場時のSEにニコの“青春の日々(原題:These Days)”を使用していたり、大阪のシンガー・ソングライター児玉真吏奈がフェイヴァリット・シンガーとしてシビル・ベイヤーの“ジ・エンド”をライヴでカヴァーするなど、彼女たちの音楽が若い世代のミュージシャンに確かな影響を与えている光景を見るまでに至っている。

 

そんな中で1969年のデビュー以降、現在まで活動を続けるロンドン生まれのフィメイル・シンガー、ブリジット・セント・ジョンがこの度8年ぶりの来日を果たす。SNSやサブスクリプションの普及によりいわゆる“知る人ぞ知る”や“隠れた名盤”無き現在、また前述のようなフィメイル・シンガーたちも日本でシームレスに受け入れられている中で、最良のタイミングであり、重要な公演となるに違いない。DJジョン・ピールのレーベル〈ダンデライオン〉から『アスク・ミー・クエスチョンズ』でデビューし、4枚の作品を立て続けに発表したのち1976年からロンドンからニューヨークに移り住んで今日にまで至る。現在はリバーサイドパークを向かいに臨む、ハドソン川と木々に囲まれた郊外で生活を送っているようだ。

 

 

「キャリア初期の曲は、私の幼少期の経験からの影響が大きいです。庭師の両親の元に生まれて、ロンドンの南西部分にあるリッチモンド公園に近いところで私は育ちました。ハリネズミやリス、鳥たちも住むところで、木に登ったりして遊んでいたような自然溢れる環境で。18歳でそこから離れましたが、私のスピリットはそこで培われ、人生を通して影響を及ぼしています」

 

主催元である代官山のライヴハウス〈晴れたら空に豆まいて〉では先日金延幸子がアメリカから久々に帰国して「45年目の”み空”」公演を行ったばかり。金延幸子のレジェンダリーなオーラもそこそこに、当時を再現することの気負いはまるでなく、年齢を重ねた今の姿と歌を屈託なく披露していく振る舞いで観客を魅了していたが、ブリジットも同じように“Hello.Again”とほほ笑んでカジュアルに私たちの眼前に現れることだろう。

 

「私がずっとシンガー・ソングライターを続けているモチベーションは、自分の音楽を通して人と繋がっていくことです。歳を重ねていくにつれて、自分の取るべきスタイルを把握し、よりよい歌が歌えるようになっていきました。そういう意味では若いころよりも今の方が音楽をより楽しんでいると言えますね」

 

 

2001年の初来日から数えて4度目の来日公演となる。そんな貴重なライヴの中でも2001年は『アンダー・トウキョウ・スカイズ』、2010年は『ジョリィ・マダム ライヴ・イン・ジャパン』と録音盤としてリリースされている、今でも追体験できることからもこの日本公演はいずれもメモリアルな空間だったことが伺える。2010年来日時に共演した京都のシンガー・ソングライター林拓とは今回京都CLUB METRO公演と、代官山晴れたら空に豆まいての14日の公演で、再度の逢瀬を果たすことにも注目だ。

 

 「拓やその家族と再び会えるのは今回本当に楽しみにしています。彼の繊細さにはケビン・エヤーズを彷彿とするんです。私たちは互いにケビンを愛していますし、今回彼と一緒に出来る公演では“ジョリィ・マダム”や“ザ・オイスター・アンド・ザ・フライング・フィッシュ”など数曲コラボレーションする予定です。拓は寛大な心を持ち、カリスマ的に美しい声の音楽家だと思います」

 

 

これまでの来日経験の中で「日本人の小さな空間をリッチな環境へ変える、細部に渡る気遣いや様々なものに対する畏敬の感性を愛している」と語るブリジット。最後に72歳となる現在も歌い続けている彼女に今現在魅了されているアートについて聞いた。

 

「最近いくつかのドキュメンタリー映画に感銘を受けました。まず「100 Years〜one woman’s fight for justice〜」。勇敢なアメリカ先住民の女性エルイーズ・P・コベルが、不公平に対して立ち向かっていく姿を描いた話です。ネイティブアメリカンのための彼女たちの正義の闘争をサポートしたく、2回見てしまいました。想像を絶する弊害にあきらめることのない、この精神の強さに感動しました。もう1つは「Blood on the Mountain」。このドキュメンタリーは、ウェストバージニア州の環境と経済の不公正や企業統制、またすべてのアメリカ人労働者に対する影響に焦点を当てています。この映画は歴史的に選択肢が限られていて、土地の豊富な天然資源から公正に利益を得たことのない勤勉な石炭鉱夫と、その家族の物語です。私はこの闘争のストーリーに魅了されています。そこにインスパイアされることを見出し、私に出来る方法で不公平を是正する方法を探したいと思っています。」

 

ブリジット・セント・ジョンに宿る不屈のモチベーション。今の時代にもヴィヴィットに響くフォーク・ミュージックを歌い続ける彼女のステージをさあ目撃しようじゃないか。

 

 

☆「Bridget St. John(ブリジット・セント・ジョン) “Hello Again” Japan Tour 2018」特設サイトはこちら

 

 

◆峯大貴(みね だいき)

1991年生まれ 大阪出身、東京在住の会社員兼音楽ライター 。
関西発のカルチャーサイト『アンテナ』『ki-ft』を拠点に、『CDジャーナル』『OTOTOY』『Mikiki』などのメディアで執筆中。
twitter:@mine_cism 

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